こんにちは!Dr.TAKAこと内科医でスポーツドクターの栗原隆です。
最近、SNSやYouTubeで「デパスは危険な精神薬だ」という議論をよく目にします。
実際、私の元にも「デパスは危険なのでしょうか?」というご質問をよくいただきます。
長年日本で広く処方されてきたお薬「デパス」。本記事では、デパスの特徴、危険視される理由、そして専門家が考える「最も危険な精神薬」について詳しく解説します。
デパス(エチゾラム)の基本的な特徴
個人的な見解として、デパスそのものが「非常に危険」とまでは言えないと考えられますが、なぜ多くの場所で使われ、なぜ危険視されるのか、その特徴を見ていきましょう。
💊短時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤
デパスは、ベンゾジアゼピン系と呼ばれるお薬の一種です。短時間で作用し、不安や緊張を取り除く効果があります。
💊精神科以外でも処方される理由
デパスの最大の特徴の一つが「筋弛緩作用(きんしかんさよう)」、つまり筋肉を緩める作用です。
この作用があるため、デパスは精神科だけでなく、内科や整形外科においても、ひどい肩こりや腰痛の治療薬として長年、大量に処方されてきた歴史があります。この点において、デパスは精神病のためだけのお薬ではないと言えます。
デパスが「危険」と批判される主な理由
デパスが問題視される背景には、主に以下の3つの理由が挙げられます。
耐性と依存性の形成のしやすさ
デパスは、耐性がつきやすい(同じ量を飲み続けても効きにくくなる)点や、依存性を形成しやすい点が問題視されています。
海外での規制と安全性の懸念
デパスは、海外では販売が禁止されていたり、法律上許されていなかったりするケースが多い薬です。これは、副作用の強さや依存性の形成のしやすさが主な理由です。
特に、筋弛緩作用により、高齢の方がデパスを服用した場合に転倒や骨折をしてしまうリスクが存在します。
副作用としての妄想・幻覚
通常、幻覚や妄想は統合失調症などの精神疾患に多く見られますが、デパスを使用する際の注意事項には、副作用として妄想や幻覚などもあるとされています。
デパスの継続使用と処方の考え方
💊長期服用について
デパスは「良くはない薬」という見解ではあるものの、長期間飲んでいても問題なく過ごせている方も多くいらっしゃいます。そのような方々は基本的に薬の継続が問題ないとされています。
また、「デパスを飲み続けると認知症になる」という議論がありますが、デパスはかなり古いお薬で大量に処方されてきたにもかかわらず、本当に認知症が増加するかどうかは、医科学的にはまだ不明とされています。
💊処方の基準
デパスでないと症状が取れない方にとっては、非常に救いになる薬である一方、例えば不安症状で来院された方に、最初からデパスを処方することは通常ありません。
処方するケースとしては、以下のような場合が考えられます。
- 症状が特に強い方
- 一般的な筋弛緩薬(テルネリンやミオナールなど)を試しても、肩こりや腰痛が取れない場合
- うつなどのメンタル系の背景があり、強い筋緊張を伴う方
ただし、近年では専門家の間でも、デパスを早期から処方することへの議論が多く、処方量自体は減少傾向にあると見られます。
専門家が考える「最も危険な精神薬」とは?
デパスよりもさらに危険性が高いと考えられる薬は、睡眠薬のカテゴリーに入るものが多いと考えます。
専門家が特に危険だと指摘するのは、サイレース(フルニトラゼパム)です。
フルニトラゼパムの危険性
このお薬は、意識が飛んだり、記憶が飛んだりするほどの強さを持っています。そのため、過去には性犯罪などの犯罪に悪用されるケースが非常に多くありました。
最近では、製薬会社が水に溶かした場合にわかるように青い色素を薬に添加し、悪用を防ぐ対策を講じています。
社会問題化する違法使用
このサイレース(フルニトラゼパム)が、最近、東横界隈の若者たちによるオーバードーズ(過剰摂取)などに使われているという社会問題が起こっています。青い舌を出している若者のニュースなどは、まさにこのフルニトラゼパムが溶けて青くなった状態を示しています。
これは、本来、医師が処方するはずの処方薬が、何らかの形で違法に転売され、危険な方法で乱用されていることを示しており、非常に深刻な問題です。
デパスの減薬・中止を検討されている方へ
デパスは古くから存在し、今も処方されている薬であり、長く飲み続けている方が無理に急いでやめる必要はありません。
しかし、「デパスの量を減らしたい」「他のお薬に変えたい」と考える場合、安全性を考慮した上で徐々に減らしていくことが非常に重要です。
減薬には、1日の飲む量を1/4ずつ、あるいは半分に減らすなど、非常に微妙なさじ加減が必要となります。必ず精神科や心療内科の専門医に相談し、長い目で見て計画的に減薬を進めていきましょう。
また、これから新しくデパスを処方されそうになった場合は、処方する理由などを担当の先生にしっかり確認し、ご自身が納得した上で服用することが大切です。
Dr.TAKA
12月13日リリース