こんにちは。Dr.TAKAこと内科医でスポーツドクターの栗原隆です。
今日は、YouTubeなどでたくさん目にする怪しい情報に惑わされないよう、エビデンスに基づいた正しい便秘の解消法についてお話しします。
便秘の影に潜むリスクと市販薬の落とし穴
Youtubeの視聴者さまから、脳出血の再発予防のために「便秘に良いストレッチを教えてほしい」というお便りをいただきました。
ドクタータカ先生はじめまして。いつも楽しく拝見しています。私の母(77歳)は若い頃から便秘持ちで、定期的に市販の便秘薬を容量も守らず大量に飲んで無理やり出していました。
今年の1月に脳出血で倒れ、今は、病院で処方された便秘薬と血圧下げるお薬を飲んでいます。
今も便秘のため、脳出血の再発が怖いので、便秘によいストレッチをYoutubeで教えていただけると嬉しいです。
因みに、母は、市販のスルーラック・通常1~3錠を、一度に8錠ほど、月に三回飲んでいました。若い頃からずっとです。今は、グーフィス錠5mgを2錠▶一日一回と
便秘が辛いときに飲むお薬、センノシド錠12mg1回1錠を処方されています。
また、便秘の状態をずっと我慢していると、便が腸に溜まり、腸閉塞など大きな病気につながることがあります。便秘を軽視せず、大きな問題だと認識することが大切です。
💊刺激性下剤と酸化マグネシウムの注意点
- 刺激性下剤:習慣性があるため、同じ量を飲んでいても出なくなるという現象が起こります。常用は避けた方が良いと言えます。
- 酸化マグネシウム:かなり昔から使われており、比較的安全性も高いお薬ですが、取りすぎると高マグネシウム血症などがごく稀に起こるため、必ずしも「絶対安全」な薬ではありません。
💊マグネシウムサプリメントの選び方
便秘用の「酸化マグネシウム」は、体の機能を維持するために必要なマグネシウムとは種類が異なるサプリメントであることが多いです。
海外製のサプリメントでは、酸化マグネシウムだけでなく、クエン酸マグネシウムなど様々な種類のマグネシウムが含まれています。
マグネシウムが低く体調が悪いという方は、成分表示を見て、酸化マグネシウム以外のマグネシウムが使われているかチェックし、バランスよく摂る方がより効果的です。
「速攻でドバドバ出る」ストレッチやマッサージは本当か?
YouTubeでは「これをやれば速攻でドバドバ出る」といった動画が多く見られますが、実はどれもエビデンス(科学的根拠)がないものばかりなんです。
お腹のマッサージについても、マッサージで便秘が改善したという研究はあるにはありますが、「このやり方が正解」という標準化された方法はまだ確立していません。ですので、このやり方で必ず出ると断言する動画はエビデンスに基づいているとは言えないんです。
ただし、ストレッチやマッサージでリラックス効果を得ることで、間接的には便秘が改善される可能性はあります💩
便秘の4つのタイプを知ろう!
便秘と一口に言っても原因は様々で、それぞれのタイプに合わせた治療が重要になります。生活習慣の改善でご自身で改善できるのは、主に「機能性便秘」です。
- 機能性便秘:腸や直腸の働きに乱れが生じて起こる、最も一般的なタイプです。これは以下の3つに分類されます。
- 弛緩性便秘:大腸の動きが弱くなり、便の移動が遅れるタイプです。高齢者、運動不足、朝食を抜く習慣がある人に多いです。
- 痙攣性便秘:腸の動きが不規則になり、便がスムーズに出ないタイプで、精神的なストレスが関与することが多いです。
- 直腸性便秘:便を繰り返し我慢することで直腸の感覚が鈍り、排便反射が起きにくくなるタイプです。
- 器質性便秘:大腸癌、炎症性疾患、手術後の癒着などにより、腸の通り道が狭くなってしまうタイプです。これは原因となる病気の治療が基本になります。
- 症候性便秘:全身の病気に伴って現れる便秘です。甲状腺機能低下症や糖尿病の合併症、神経の障害などが代表的です。女性ではホルモンの影響で生理中や妊娠中に起こりやすいこともあります。
- 薬剤性便秘:服用している薬の副作用や、便秘薬の使いすぎによって起こる便秘です。下剤の不適切な使用だけでなく、向精神薬、抗コリン薬、咳止め、パーキンソン病の治療薬などが関係します。
エビデンスに基づく便秘解消法5選
1. ウォーキング(運動)
ウォーキングはエビデンスのある便秘解消法です。
歩くことで腸の動きが活発になり、便が腸に留まる時間が短くなります。また、腹筋や体幹が刺激されることで、便がスムーズに直腸へ移動しやすくなると考えられています。
- 推奨目安:便秘解消を目的とする場合、スポーツドクターの立場からは、週に150分のウォーキング(例:1日30分を週5回、または毎日20〜30分程度)を続けるのがおすすめです。
- 効果:ウォーキングは、今ある便秘を改善するだけでなく、将来の便秘を予防する効果もあります。健康に良い最高の運動だと言えます。
2. プロバイオティクス(善玉菌)
便秘解消にはプロバイオティクスの摂取をお勧めしています。
プロバイオティクスとは、健康に役立つ効果を発揮する生きた善玉菌のことです。
ヨーグルト、キムチ、ぬか漬け、ザワークラウトといった発酵食品のほか、味噌、醤油、塩麹、酢などの発酵調味料にも豊富に含まれており、日常的に食事で取り入れることが推奨されています。
- 最も効果的な摂取法:空腹時と比べて胃酸が薄まり、生きた菌がそのまま腸に到達しやすいため、朝食の後に摂るのが最も効果的です。
- 継続期間:腸内の菌のバランスが整い安定するまで、少なくとも2週間、できれば1ヶ月は続ける必要があります。
3. 食物繊維の摂取
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、どちらも便秘解消に効果的です。
水溶性食物繊維
水に溶けて便を柔らかくし、腸の働きを助けます。
- 食品例:海藻類(わかめ、昆布、ひじき)、果物(りんご、バナナ)、野菜(山芋、アボカド)、豆類など。
💎乾燥プルーン:乾燥により成分が濃縮され、食物繊維とソルビトールを効率よく摂取でき、便秘改善につながりやすいです。ソルビトールは腸に水分を引き込み、便を柔らかくする働きがあります。
💎キウイフルーツ:毎日2個のグリーンキウイフルーツを4週間摂取することで、便秘と腹部の不快感が改善され、排便回数が優位に増加し、便の硬さが柔らかくなったという研究報告があります。
- 研究結果:乾燥プルーンとキウイは、天然由来の食物繊維であるサイリウムと比較した研究で、サイリウムよりも効果が上回ったと報告されています。
不溶性食物繊維
水に溶けずに腸の中で膨らみ、便の傘を増やし、腸を刺激して動きを活発にし、自然な排便を促します。
- 食品例:穀類(玄米、オートミール、全粒粉パン)、野菜(ごぼう、れんこん、ブロッコリー)、きのこ類(椎茸、えのき)、根菜類(さつまいも、大根)など。
- 注意点:急に食べすぎるとガスやお腹の張りがでやすいため、少しずつ増やすことがおすすめです。
4. 水分摂取
健康維持の基本ですが、便秘解消にも効果的です。
- 推奨摂取量:健康に良い水分摂取量は、大体1日1.5Lから2Lと言われています。
- 飲むタイミング:夜中は脱水傾向にあるため、朝起きてすぐコップ一杯の水を飲むと良いです。
- 水の種類:マグネシウムの含有量が多い硬水を選ぶのがおすすめです。例えばフランス産の硬水コントレックスには、1Lあたり74.5mgのマグネシウムが含まれています。
- 温かい飲み物:水を一度沸かし、覚ました**白湯(さゆ)**は、腸の蠕動作用(運動)を促進させるため推奨されています。
5. ストレスを溜めない
腸は「第2の脳」と呼ばれ、腸と脳が神経やホルモンを通じてお互いに影響しあっている(腸脳相関)ことが知られています。ストレスがかかるとお腹を壊したり、旅行中に便秘になる方は少なくありません。
誰かに話を聞いてもらうなどしてリラックス効果を得ることで、間接的に便秘が改善される可能性もあります。
うつやメンタル不調など、精神面の問題が便通の異常(下痢や便秘)に絡んでいることもあります。
便秘が続く場合は、自己判断せず病院へ
便秘は大きな問題であり、便秘薬の使いすぎなどで腸が刺激に慣れてしまっているケースや、裏に大きな病気が隠れている可能性もあります。
3日や4日、あるいは1週間便が出ないという場合は、自己判断せずに病院に行ってしっかり診断を受けることが大切です。
専門領域は消化器内科です。受診時には、現在服用している薬の副作用で便秘が起こっている可能性を特定するため、お薬手帳を持参することが大切です。もしクリニックで診断がつかない場合は、総合病院や大学病院を紹介してもらい、より大きな病気が隠れていないか確認してもらいましょう。
Dr.TAKA
12月13日リリース